16:夢 -布団発・無意識旅行
ちょうど1年前、私は今でもインパクトが残って、記憶から消えない夢を見ました。
【夢】
医師である友人に導かれて、とある建物に到着する
巨大で重い扉を開けると、青白い光を受けた手術室が現れる。
そこで、何故か両親の結婚式がスタートする。
夢を見ている私は、その結婚式が‘二度目’であることを知っている。
次の瞬間、見慣れた母親の顔は、見ず知らずの若い女性に変わる。
その女性は妊娠しているが、おなかの中の子どもは産まない、という決断をしている。
意味ありげだけど、意味不明。つながりもよくわからない。
それなのに、今になっても驚くほどその夢を記憶しており、ありありとその感覚や感情を思い出すことができるのです。
それにしても、夢はどうしてこうも不思議で神秘的なのでしょうか?
夢の中のあの建物は何?なぜ手術室で結婚式を?しかも二度目の・・。
そして女性のお腹の中の子どもは一体誰なの・・?
なぜ彼女はその子どもを産まないという決断をしているの?
限りない不思議さと疑問が浮かび上がり、 私の人生・・過去や現在と夢のイメージは混じり合い、そのことについて知りたい、という衝動にかられます。
おそらく、この夢は私にとって特に大切な夢なのでしょう。
皆さんはいかがですか?
印象に残る夢、繰り返す夢があったり、そのメッセージについて知りたいと思ったことはありませんか?
夢の正体とは何なのでしょう。
‘夢’とは、‘夢を見る’とはどんな意味があるのでしょう?
精神分析の考え方では、夢は無意識への王道であると捉えられています。
古くは、抑圧されていた願望を充足させる働きを持つと考えられましたが、
それに加え、登場人物やその状況、様々なアイテムに象徴される意味を探っていくことが
心の解明に役立つだろうとされています。
つまり、夜見る夢は、人間にとっての日常(これを‘意識している世界’とか、‘現実’という言葉で置き換えてもいいかもしれません)ではなく、もう一方の人間の側面(‘無意識の世界’とか、‘非現実’といっていいでしょう)を表していると言えるでしょう。
そして、何よりも、夢は冒頭の私の夢のように意味不明であり、意識的に考えられる自分像を遙かに超えたイメージを提供してくれる豊穣なものです。自分の負の部分も、未知の部分も、希望も絶望も含み込んだようなあのような奇想天外なイメージは天才小説家でもない我々が意識だけに頼っても編み出せないものです。
その‘わからなさ’に惹かれた先人たちが
こころ、そして夢の意味を知ろうと、夢から何かを発見しようと、試みてきました。
夢のお告げや夢占いなど、歴史や物語の重要な転回点で夢は登場してきました。
夢は、こころの硬直や袋小路を抜け出す重要な契機となり得るのです。
心理療法においては、相談者の方が夢を語ったとき、
その語りや夢の内容には意味があると仮定し、大切に扱います。
相談者の方がその夢から連想すること、セラピストがその夢から連想すること、
それらをつなげあわせながら、つながらないところは何かを確かめながら、
果てしなく広がるこころの世界を共にゆっくりと歩んでいく。
それが心理療法の作業の一つです。
この絵は、ヘンリーダーガーという人の作品です。
彼は、自らが夢想した物語について生涯を通して記録しました(『非現実の王国で』)。
この絵は、彼が夢として見たことなのか、空想したことなのか、それはわかりません。
もしかすると、夢なのか空想なのか、その境目は彼自身もわからなかったかもしれません。
しかし、夢の面白さや不可思議さをよく表している絵だと思います。
皆さんはここから何を連想され、何を発見するでしょうか。
さてさて、今日の夜はどんな夢路をたどることができるでしょうか‥どんな冒険やどんな示唆と出会うことができるでしょうか?
布団一つで行ける無意識世界旅行を味わいましょう。
それでは・・・・・おやすみなさい。
(MT)
2011.08.01