37:新緑の季節に・・・

今年も新緑の季節がやってきた。

私は毎年この季節を心待ちにしている。

桜が散ったあとに訪れる、新しい命あふれる季節・・・

光の恵みのなかで生まれ育つ新しい緑に、なんだかとても愛おしい気持ちになる

そんな季節でもある。

やわらかな光と風に包まれた若い緑は、この世の中との新しい出会いを、からだいっぱいに受け止めて、きらめいているようにみえる。

まるで、ちいさな子どもが、新しい世界を全身で感じているように。

ちいさな子どもたちに、それを支えるお父さんやお母さんが傍にいるように、

生まれたての柔らかな新芽には、それを支える枝があり、幹があり、根っこがある。

かつての新芽が雨風、暑さ寒さに耐え、年月を経て、強くたくましく新芽を護る。

私たちは、日々いろんな役割や思いのなかで生きている。

幹のように根っこのように、ある時は枝葉のように、そして時には枝葉の滴のように感じながら、毎日を生きている。

でももしかしたら、あの頃のやわらかな緑だった頃を懐かしく思っていて、

何か新しい出会い、その時の驚き、きらめきを、ぬくもりを感じる、

そんな瞬間を、いつもどこかで探しているのかもしれない。

毎年毎年、必ずひとつ年をとってこの季節を迎えるけれど、

いつもどこか新しい出会いや発見を求めている自分に気づく。

新しい出会いや発見がもたらすものは、いいことばかりでもない。

時に痛みや悲しみ・そして喪失を伴いながら、私たちは枝や幹や根っこに

なっていく。

苦しみや痛みは歓迎したいことではないけれど、

そうしてめぐりめぐって生きていくということを、私たちはどこかで知っているのだと思う。

(O)

2013.05.01