31:からだが語る気持ちシリーズ4 「ねむりの効用」

今回は、「からだが語る気持ち」から少し離れて、主に「眠り」のことについてお話したいと思います。眠りにあらわれる心の世界としては、「夢」がありますね。このコラムのシリーズの16回目に取り上げられています。

「しっかり睡眠をとる」ことは、「からだも心も休める」こと、と一般には理解されていると思います。しかし、実は眠っている間、わたしたちの頭の中、脳は活発に働いています。起きているとき、つまり意識があるときは、脳の働きはむしろ抑制されているようなのです。

わたしたちの睡眠は、90分を1つのサイクルとして深い眠りになったり、浅くなったりして繰り返されています。よく、90分の倍数の睡眠をとると目覚めがいい、と言われていますが、これは眠りの浅いタイミングで起きると目覚めがいいということなのです。夢は、眠りの浅い時間帯、レム睡眠と呼ばれる睡眠の間に見られることが知られています。このレム睡眠のあいだに、脳は大切な仕事をしています。

それは、「記憶をしかるべき形に整えること」仕事です。

試験の直前に大慌てで英単語や歴史の年号を覚える。このような「一夜漬け」は、徹夜でそのまま試験に臨むよりも、一夜眠って睡眠に「漬けて」おくことが、記憶の定着率を上げることが明らかになっているのです。ここには、海馬と呼ばれる脳の一部分が関係しています。もう少し詳しく説明すると、ここで覚えられやすいのは、単純な知識より、ある程度「お話」になっている情報のようです。ごろ合わせや、いくつかの情報が組み合わされていた方が、眠っている間に物語として整えられて定着するため、覚えやすいのです。

その一方で、眠りの間に、わたしたちは、「忘れること」も行っています。

何を覚えて何を忘れるか自由自在、という訳にはいかないのですが、不必要なことを忘れたり、つらすぎることの痛みを和らげたりすることも、眠っている間に脳が働いて仕分けの仕事をしています。

眠らないでいることは、この整理や仕分けをおこなわない、ということになってしまうので、精神機能の危機であるとも言えるのです。 毎日決まった時間に布団に入って、翌朝目を覚ますこと、なかなか難しい場合もありますが、特に大事な行事や試験の前は、まずは部屋を暗くして、布団に入ってみてください。短時間でも眠っている場合が多いものです。

いろいろと困難もありますが、眠りと夢に仕上げの仕事は任せて、”明日”をスタートさせましょう。

(鈴木)

2012.11.01