33:一年の始まりに

新しい年を迎えると、年末の気ぜわしかった空気が一変します。のんびりとしたお正月の時間の流れのせいか、新春という言葉の響きのせいか、澄んだ冬の空気がどこか丸みを帯びたようにも感じられます。何かが一皮、つるりと剥けたような新鮮さです。

毎年繰り返されることではありますが、考えてみると不思議な気持ちになります。昨日と今日の境目は大抵あいまいなのに、大晦日と元日の間に「新年」がこんなふうに新鮮にやってくるのは一体どうしてなのだろう、と。

一年の終わりと始まりの境目は、長く続く人生に定期的に訪れる、ひと区切りです。

人は締め切りという区切りがあると、一生懸命動いたりするものです。年の瀬を前に、人は「やり残しがないように」とがんばって働き、片付け、準備をします。こういう努力は、身軽になって迎えた新年に何か新しいことが滑りこんでくるためのスペースを作るためのようにも思えます。

苦労して片付けた場所に、新しい何かがやってくるように。片付けに忙しくなくなった心に、新しい何かが芽生えてくるように。

カウンセリングの場を訪れる方々は、何らかの人生の節目を迎えた方が多いように思います。それは何かのつまずき、心身の病、あるいは思い悩むことの限界…のような形で姿を表し、片付かないまま残してきたものに取り組むよう働きかけてきます。それは、さまざまな出来事や感情が飽和して、何らかの形で結実することや区切りのつくことを求める力のようでもあります。

悩むことは、否応なく人を動かし何かを考えさせようとします。自分の心の問題に取り組む道のりは決して平坦なものではありません。それでも自らの中に滞ったままの“思い”に触れ、そこに身を置き、語りかけるうちにふと「区切りのつく」ときがあります。その時、心に新しい何かが滑り込むスペースが生まれます。がらりと変わったわけではないけれども何か新しい、そんな感覚が芽生えるかもしれません。

ところで皆さんも年末には、何かしらの片づけものをしたのではありませんか? 去年のうちに片づけた場所には、何が滑り込んでくるのでしょうね。

少し新しくなった自分で、今年も歩みだすことにいたしましょう。

(H)

2013.01.07