29:坂道をゆきながら

いやはや、毎日きびしい暑さですね! みなさま、夏バテなどしていませんか?

まだしばらくはこの暑さが続くようなので、体調にはくれぐれもお気を付けくださいね。

さてさて。

毎度のことながら、何を書こうか…とテーマも決まらないままにとりあえず書き出しています。

窓の外はとにかく夏の眩しさでいっぱい。エアコンの効いた部屋に居ても、猛烈な暑さがこころに迫ってくるようです。

ふと、オフィスにつづく坂道の風景が浮かんできました。

さほど長くもない、ゆるやかな坂道です。

この坂道のてっぺんに行く途中に、オフィスがあります。

サイコセラピーという、日常生活と地続きではあるけれども、決まった時間のなかで深くこころをやりとりする半・非日常空間であるオフィスにつづくこの道。

わたしにとってはそういう意味ももつ道であるからか、歩を進めるにつれ色んな感覚が敏感になり、さまざまな思いがこころに浮かんできます。

「暑い時は坂道しんどい…運動不足だからなぁ…もう少し体力つければしんどくなくなるんだよね。分かってるのに、鍛えないのはどうしてだろう?…面倒だし。でもしんどいのが嫌なら、何か運動を始めればいいんだよなぁ」

「余裕がない時は前を向いて歩けないものだな…でも下向いてでもゆっくりでも歩いていると、オフィスに着く。あ、こんなとこに紫色の花が咲いてたんだ…きれいだなぁ」

「わたしは今坂はしんどいと思いながら歩いているけど、クライエントさんはどんなことを思いながらこの道を来るのかな…もっとしんどいかしら。逆もあるかしら」

などと、つらつら考えてるうちに、オフィスにたどり着きました。やった、今日ものぼりきったぞ!ささやかな達成感とともに、ふぅ、とひと息ついて後ろを振り返ってみます。

来た坂道とともに、向こうの街並みまでよく見渡せます。風が身体をすり抜けていきます。

「あ…この感覚はサイコセラピーが終わる頃のものと共通しているなぁ…」と、わたしはそう感じました。

サイコセラピーの道ゆきでは、こころの様々な在りよう、真実と向き合うしんどさをどうしても体験します。そうして、すべてを自分のこころに在るものとして受け入れられたときには、和らいだ痛みとともに確かな手応え、生きている、生きてきたという実感をもちます。

そして、その時のこころを風景に喩えるならば、こんな風かもしれません。

「あちらの遠くにみえる森の中にはかつて囚われていた暗くて深い穴がある、険しい崖もあった。とんでもない激流と、獣が潜む藪も。でも途中は道が穏やかになっていて、こっちには花々が咲く広々とした草原で。あたたかい泉も湧いている。それから、そっちには冷たく寒い谷もあった。-さぁ今はこの坂の上。見ようと思えば、これまで来た道を振り返ることもできる」

風景の中には、たくさんの人々もいます。心優しい人もいれば、冷たく厳しい人も、ずるい人も正直な人も、それぞれの面を併せもった人も、いろんな人が住んでいます。

さてと、今は坂の上。振り返ることも、この坂の向こう側、まだ見知らぬ景色を進んでいくことも選べます。自分の思う方向へ、思う歩幅と速度で自由に歩いて行ける。

そんな坂の途中にあるオフィスで、あなたの抱えきれない苦しみや傷つきというこころの荷物を、少し形を変えて、詰め直すことができて、歩みやすくなるようお手伝いできればと思います。

そうして、いつの日か見る、登りきった坂道の先にはどんな景色がひろがるのでしょうか。

まだ先のおたのしみ、かもしれませんね。

(O2)

2012.09.01